伝統
2020.02.18
沖縄の神社の歴史・芸能巡り!琉球八社の「末吉宮」
末吉宮は琉球国王が参拝した記録が残っており、今でも首里城から国王が通った道を辿って参拝することができる貴重な神社です。
ちょっとした山道を歩きますのでお参りするのは少し大変かもしれませんが、境内からは東シナ海を一望することができ、海と山、両方の眺望を楽しむことができますよ。
ここでは、琉球女性の恋のお話、ドキドキの初詣体験、参拝後の散策路などを紹介しますので、参考になさってくださいね。
那覇市に鎮座する「末吉宮」とは?
末吉宮は、那覇市の「末吉の森」に鎮座しており、1456年頃に天界寺の和尚が熊野三所権現を勧請し祀ったと伝えられています。
磴道(拝殿へ登る階段)全体と本殿は昭和11年旧国宝に指定されていましたが、先の大戦で消失。大戦後に再建された社殿は、昭和47年に「末吉宮跡」として国の史跡、磴道は「末吉宮磴道」として県指定の文化財に指定されました。
かつて末吉宮は「社壇」とよばれ、琉球国王が毎年参拝していたとされています。また、首里城から見て北側に位置しているため「子の方神」(にーぬふぁのかみ)と呼ばれ、事始めの神様として、縁結びや子孫繁栄のご利益があると信仰されています。
王国時代に整備された石畳の道を通るコースがおすすめ
経路はいくつかありますが、往路は平良交差点手前から進むのが一番おすすめです。入り口が少しわかりにくいですが、儀保十字路を浦添向けに進み、昭和橋を渡り、平良バス停の手前の道を左折します。
写真は、平良バス停を左折した先にある、石畳に繋がる道。この細い道を目指してください。
この道は王国時代に整備された石畳の街道で、平良町と末吉町を結んでいます。
琉球国王も首里城からこの道を通り末吉宮へ参拝していました。
平良交差点側から向かうと、先に迂回路(赤色)にぶつかります。旧道(青色)から参拝する場合は、迂回路を通り越しましょう。
旧道は滑りやすいので注意が必要。
迂回路は手すりがありますが、なかなかの急階段です。
末吉宮へ参拝するには旧道または迂回路を必ず通ることになりますので、歩きやすい靴がおすすめ。里山ハイキングを楽しみながらお宮へと進みましょう。
また、石畳の道は北側(浦添側)に拝所や墓所にそれる脇道がありますが、古来より琉球の人々が大切にしてきた場所です。先人達に敬意を払い、むやみに立ち入ることは控えましょう。
石畳を直進すれば、10分程で参道にたどり着きます。(写真は迂回路方面)
末吉の森に垣間見る、女たちの熱き思い
静まり返った石畳の道を歩いていると、王国時代にタイムスリップしたかのような気分になります。たくさんの琉球人がこの道を歩いたことでしょう。
その中でも今回は、末吉の森に関わる琉球女性達の恋愛に関するお話を紹介します。ぜひ過去の琉球人に思いを馳せながら巡ってみてください。
1.首里の士女の恋愛成就祈願
琉球では、もともと琉球古来の信仰があった場所に神社ができたことは波上宮や沖宮でも紹介しましたが、末吉宮も同様に神社の周りは拝所がたくさんあります。
末吉宮の御由緒書きに「夜半参御嶽」(やはんめーうたき)という逸話があります。「深夜に入髪(いりがん)を添えて末社荒神に祈願すると恋が叶うとして、主に首里の上流士女に信仰されていた」というものです。
首里の士女ですから供連れであるとは思いますが、夜中に髪の毛を添えて意中の相手との恋愛成就を祈願するとは、執念すら感じさせる願のかけ方です。
入髪(参考)※髪を結う時に使う付け毛のこと
2.美少年に恋い焦がれ鬼と化した女
琉球王国は外交手段の一つとして、独自の芸能を発展させてきました。
1800年代に、中国からの使節団を歓待するための演目として「組踊」(くみうどぅい)という歌舞劇が創作されました。演目は多数ありますが、末吉が舞台となっている演目「執心鐘入」(しゅうしんかねいり)を紹介しましょう。
〜執心鐘入のあらすじ〜
中城若松という美少年が奉公のため首里に向かう途中、暗くなってきたため民家に一夜の宿を乞います。家の娘は両親が不在とのことで断りましたが、少年が名声高き中城若松だと名乗ると、態度を一転、家に招き入れます。夜もくれて、娘は好機とばかり若松に迫りますが、にべもなく断られてしまいます。身の危険を感じた若松は、すぐさま宿を後にし、末吉の寺へ助けを求めます。座主は若松を鐘の中に匿い、僧に女人の立ち入り禁じるよう命じます。後を追ってきた娘は寺に入ることができず、若松への募る想いから鬼女へと姿を変えますが、座主の法力によって封じ込められてしまうのでした。
舞台となった末吉の寺(遍照寺跡)には石垣が残っています。
女の家は浦添間切(現在の浦添市)にあり、末吉の寺(現在の遍照寺跡:末吉宮の神宮寺で末吉宮の下に位置していた)に向かうには、平良側からの経路と同じであると考えられます。
明かりは持っていたのでしょうが、若い女性一人でこのような道を行くとは、若松への募る想いが先立ち、恐怖心など一切頭になかったのでしょう。
(物語は創作ですので、あくまでも設定上のお話です。)
「女たちはどんな気持ちでこの石畳を歩いたのか…」実際に体験してみたいと思った私は、末吉宮へ初詣に行くことにしました。元旦は社務所が空いているので、深夜の参拝が可能です。2020年は子年でしたので、「子の方神」にお参りすることで縁起もよさそうです。
末吉宮へ初詣!
安全を考慮し、平良側からの経路ではなく徒歩距離が最も短い遍照寺側(西側)から参拝しました。
駐車場から明かりのついている参道までは100メートルほどですが、真っ暗です。ハブが出そう、お化けが出そう、なんかいろいろ出そう、余計なことばかり考える私には、琉球女性のような根性(?)はないようです…。前だけを見て足早に進みました。
元旦の末吉宮遠景。少々分かりづらいですが、中央の明かりが拝殿です。
遠くから明かりが見えていた拝殿。
社務所ではお守りや御朱印などを拝受することができます。
※社務所に人がいない場合、御朱印は波上宮での拝受も可能です
参道(旧道)から那覇方面を見るとこのような景色。石畳の上に那覇の夜景が浮かび、幻想的な雰囲気です。
境内に入ると恐怖心はすっかり無くなっていました。ジャングルの中に浮かぶお宮や拝所の美しさに心踊り、戻るのが惜しかったほどです。
一年の始まりを新鮮な体験とともに迎えることができ、思い出深い初詣となりました。沖縄では真冬でも10度を下回る日は滅多にないので、夜中でも寒くないのがありがたいですね。
末吉の森は動植物の宝庫、参拝後は公園散策もおすすめ
末吉公園の案内板より、参拝後の散策経路をご案内しましょう。
・東側(平良方面)
案内板⑤の滝見橋を通るのがおすすめです。この道を行くと、儀保交番側(昭和橋よりも儀保寄り)の駐車場に出ます。(徒歩20分程度)
・南側(現在地と書いてある方向)
末吉公園に向け階段を下り、案内板④の花見橋を渡るのがおすすめです。(徒歩20分程度)ほぼ階段ですが、整備されているので歩きやすいと思います。案内版③の玉城朝薫生誕300年記念碑を目印にしてください。
沖縄では1月下旬頃から桜が咲き始めますが、同じ時期に秋桜や椿も咲いています。沖縄ならではのお花見を楽しむことができますよ。
・西側(市立病院方面) 遍照寺跡向けに進み、末吉町に下りましょう。ゆいレール市立病院前に着きます。(徒歩15分程度)
こちら側が末吉宮に最も近いです。
森の中にひっそりと鎮座するお宮ですので、参拝は天気の良い日中がおすすめです。日差しの強い時期などは、時間と体力に余裕を持って参拝しましょう。
[基本情報]末吉宮
住所:沖縄県那覇市首里末吉町1丁目8(末吉公園内)
電話:098-868-3697(波上宮社務所内)
駐車場:なし
URL:http://jinjacho.naminouegu.jp/sueyoshi.html
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