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伝統

2023.05.08

人間国宝の伝統を継ぐ、鮮やかで美しさあふれるやちむん、読谷村「陶芸工房ふじ」

沖縄の言葉で焼き物のことを「やちむん」といいます。アジア各国の影響を受け600年以上前から歴史があるとされる、やちむん。日々の暮らしで使う食器や泡盛を飲む酒器など、沖縄独自の生活や文化に合わせて作られています。

職人の技で一つ一つ丁寧に作られるやちむんは、近年ではカラフルな色合いや絵柄が入ったものも増え、観光土産としても人気ですよね。

今回は鮮やかな色と柄が目を引く美しいやちむんを手掛ける、おすすめの工房を紹介します。

「やちむんの里」にある工房

読谷村は多くのやちむん工房がある村。沖縄で初めて人間国宝に指定された陶芸家の金城次郎さんが1970年代に窯を持ったことをきっかけに、陶芸家が集まってきたとされています。

中でも高台にある「やちむんの里」は19の工房が点在するエリアで、それぞれ陶芸家の個性にあふれたやちむんに出合えます。

陶芸工房ふじ

その中で県民はもちろん県外のやちむんファンからも注目されているのは、2015年にオープンした「陶芸工房ふじ」。

代表の藤岡香奈子さんは陶芸一家で育った人物で、祖父は人間国宝の金城次郎さん。両親も陶芸家の宮城智さんと須美子さんで、須美子さんが金城次郎さんの娘とのことです。

陶芸工房ふじ

伝統的な魚紋をはじめ、ハイビスカスやジンベイザメなど沖縄の植物や生き物たちを描いたカラフルでポップなお皿やコップなどが並ぶ店内。香奈子さんと息子の恭平さんが心をこめて、一点ずつ作っています。

歴史ある「次郎窯」から生まれる作品

陶芸工房ふじ

読谷村を陶芸が盛んな村にし、人間国宝として沖縄の焼き物と陶芸家の地位を上げた伝説の陶芸家・金城次郎さん。その孫の香奈子さんは、祖父が作った登り窯を使い伝統を継いでいます。

「孫世代が工房を構え、作品をつくる時代になりました。祖父の登り窯は共同で使用しています」とのこと。1番から6番まである登り窯ですが、「ふじ」は3番窯を使うと決まっているそう。

「3カ月に一回火入れの日があり、使用する6箇所でスケジュールを割り当てています。火を入れるのは3日間です」と教えてくれました。

陶芸工房ふじ

そして登り窯を実際に見学する貴重な機会をいただきました。

1972年に作られたというトタン屋根のこの「次郎窯」は、ひと目見ただけで歴史を感じる佇まい。横幅があるのが特徴で、窯の向かい側には大量のまきが積まれ迫力すら感じます。

陶芸工房ふじ

元々祖父は那覇の壺屋でやちむんを手掛けていましたが時代の流れで住宅地に変わり、工房は煙が出ない電気窯やガス窯に変えていかなければならなくなりました。登り窯にこだわりたかった祖父は、読谷なら築くことができると移ってきたそうです」と香奈子さん。

現在も使われている当時の窯からは、やちむん文化のロマンを感じます。

完成前のやちむんが500点以上並ぶ窯の中を見学

陶芸工房ふじ

今回は特別に「陶芸工房ふじ」が使っている3番窯の中に入れていただきました。中に作られた棚には、完成前のやちむんがぎっしりと並んでいます。なんと500点以上の器が入っているのだそう。

また「窯の中は夏場は涼しく、冬は暖かいんです」という話にも驚かされました。

陶芸工房ふじ

焼く時はいくつも重ねるのが伝統で、焼き過ぎるといびつになるため均等に火が入るように並べ方に気を付け、灰がかぶらないよう最上段の棚は工夫されているのだそう。やちむんの焼き方について、細心の注意が払われていることを教えていただきました。

そして、窯の天井には「色見窓」という小さな窓が。焼き具合をチェックするための窓で、真下に「楊枝壺」などの小さなものを置き、外に取り出して確認するのだそうです。ちなみに温度の目安は1250度とのことでした。

窯を見守り、焼き具合に慎重になりながら仕上げていくのは職人がなせる技。さらにまきをくべて火力調整するのも重要な過程です。

陶芸工房ふじ

「まきを入れれば火が出るという単純なことではなく、酸素とのバランスを考えています」と香奈子さん。やちむん歴35年を誇るキャリアからの感覚で、火が全体に行き渡ることをイメージしながらまきをくべていくそうです。

その様子を撮影した動画を見せてもらいましたが、とんでもない力仕事。燃えさかる炎にまきをくべていく香奈子さんの姿は、アスリートのような躍動感にあふれていました。

「登り窯までまきを運ぶのも大変な労力なんですよ」という話ぶりから苦労が伝わってきます。まきを集める当番が年に一度回ってくるそうで、それもまた骨が折れる作業のようでした。

ポップで個性的な「ふじ」のこだわりのやちむん

陶芸工房ふじ

続いて、制作の手順について聞いてみると「ひとつの作品をつくるのに約13の工程を踏んでいます」と香奈子さん。

陶芸工房ふじ

「素焼きは2回します。色がしっかり定着するんですよ」とのこと。一般的な工程より素焼きの回数が多くなることで、手間をかけていると伝わってきます。そしてそれこそが「ふじのこだわり」だと理解しました。

工房の中におじゃますると、種類も柄も豊富で実にさまざまな作品がずらり。

陶芸工房ふじ

ホテルからの発注で作った大きなお皿や傘立てなど、オーダーメイドの品もたくさん並んでいました。

陶芸工房ふじ 陶芸工房ふじ

他にもキュートなアグー豚、バナナの葉をモチーフにしたマグカップ、重厚感ある重箱などなど、やちむんの伝統を感じつつどこかポップで個性的。使っているうちに愛着がわきそうです。

伝統的な陶芸一家に生まれた香奈子さんですが、多種多様なオーダーになるべく応え、遊び心のあるデザインに積極的に取り組み、どんどんチャレンジしていきたいそうです。

陶芸工房ふじ

「ハート入りの絵柄もあります。バレンタインが近かった時に試しに描いてみたものが好評で、続けています」と香奈子さん。かわいらしくて目にした人を笑顔にします。

現代的でポップな器はガス窯や電気窯で焼く方が発色は良く、登り窯で焼くと渋い色に焼き上がるそう。絵柄や形によって、窯を使い分けているのだそうです。

どんな時も手を抜かないこだわりが「伝統を大切にしながら新しい感覚を取り入れていく」姿勢につながっている、と気付き納得。沖縄の伝統文化を継承する香奈子さんの真っすぐな心を感じます。

陶芸工房ふじ

「器の使い方で料理が違った見え方をします。例えばコンビニの焼き鳥をお気に入りの器に並べてみてください。見た目が変わると思いますよ」と笑顔で語る香奈子さん。

陶芸工房ふじ

隣では息子の恭平さんが作業をされていました。香奈子さんが独立して「陶芸工房ふじ」を始め、そのタイミングで陶芸の世界に飛び込んだという恭平さん。

それから7年、確実にキャリアを積み「恭平さんの器が好き」というファンの声が聞こえるそうです。

陶芸工房ふじ

伝統を受け継ぎながら、新たな発想でやちむん文化を守り続ける香奈子さん。登り窯から偉大な祖父・金城次郎さんの息吹きを感じ、恭平さんと共に作品づくりを続けます。

「陶芸工房ふじ」の唯一無二のやちむんに、心惹かれる人は増え続けることでしょう。

[基本情報]陶芸工房ふじ
住所:沖縄県中頭郡読谷村字座喜味2677-1
電話:098-989-1375
営業時間=9:00~18:00 
定休日:不定休
駐車場:あり
公式サイト https://yachimunfuji.theshop.jp

執筆協力:Shotaro
撮影・編集:饒波貴子

nohatakako
この記事を書いた人饒波 貴子
那覇市出身・在住。OL生活、週刊レキオ編集室勤務を経て、フリーライターに。現在は沖縄のエンターテインメントおよび店舗紹介を中心に取材・執筆。ウェブマガジン「琉球新報Style」、雑誌「porte」ほかで執筆中。 このライターの記事一覧

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