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2022.02.14

豆で人生を豊かに!島豆富を移動販売で届ける西原町「大豆加工研究所 三代目池田屋」

豆で人生を豊かに!島豆富を移動販売で届ける西原町「大豆加工研究所 三代目池田屋」

沖縄の食文化を代表するひとつ「島どうふ」。木綿豆腐とは製法が異なり、特徴としては温かいまま販売できる、固めなので炒め物にしても崩れにくいなどが挙げられます。

沖縄県内にはいくつもの豆腐店がありますが、今回注目したのは西原町の「池田食品」。1983年の創業以来、40年近くにわたって伝統の製法で真心をこめて島どうふ作りを続ける老舗です。

瑞慶覧(ずけらん)宏至さん

3代目となる瑞慶覧(ずけらん)宏至さんは、引き継いだ製法に加え新たな商品作りや販売方法を展開。その取り組みが新感覚として人気を集めているので、詳しく聞いてきました。

県内各地へ!移動販売でおいしい「島どうふ」をお届け

県内各地へ!移動販売でおいしい「島どうふ」をお届け

「池田食品」という社名で島どうふをスーパーなどで販売するのは従来通りのまま、新たに「大豆加工研究所 三代目池田屋」というブランドを立ち上げた瑞慶覧さん。最大のポイントは国産大豆にこだわり、移動販売を行なっていることです。

「他社のとうふとどこが違うか聞かれると、明確な説明ができませんでした。なので代表に就任した時に、しっかりとしたブランディングを考えました」と瑞慶覧さんは話します。

考え抜いた結果、「三代目池田屋」というブランドで作るとうふと加工品は、滋賀県産の大豆「タマホマレ」を使用。代々続く製法を守りつつ、原料にこだわる本物思考のとうふ作りにこだわっています。

そして移動販売のシステムを構築。「9台のトラック、1台ずつが店舗です」と話すように、あちこーこ(熱々)の島豆富ほか、ゆし豆富(型に入れる前の柔らかい状態)・おからイリチー・島がんもなどの多くの商品がトラックに載って県内各地へ。本島南部から中部まで場所と曜日を決めた販売で、楽しみに待つ常連のお客さまが増えているようです。

「三代目池田屋」が挑んだ、とうふへの恩返しと社内改革

「三代目池田屋」が挑んだ、とうふへの恩返しと社内改革

ブランド名の通り、池田食品三代目の経営者となる瑞慶覧さん。「島どうふや他の商品をスーパーに納品した後、我々にできることはありません。売れ残りは廃棄になりもったいないですし、フードロスを減らすために消費者に直接販売する方法はないものだろうか」という発想から移動販売をスタートしたそうです。

とうふ

スーパーなどに並ぶ日配のとうふは通常委託販売で、消費期限は3~4時間程度。「超」生鮮食品なのだそうです。

そこで直接消費者に買ってもらうことでより効率的に。製法も販売方法も伝統を守ってきた「池田食品」でしたが、「三代目池田屋」として販売方法に変化を付けたのです。

そんなチャレンジャーの瑞慶覧さんですが、以前は福岡で美容師をしていて家業を継ぐ気は無かったのだそう。三代目になる転機が訪れた時、「育ててくれたとうふとお店に恩返しをしたい気持ちになり、実家に帰り跡を継ごうと決めました」と話してくれました。

社員として1年程務めた後に代表になりましたが、軌道に乗らず厳しい現実が続いたのだそう。

創業当時はスーパー全盛期で買い物客があふれ、委託販売で置くとうふは売れ行き好調。工場を拡大するほど順風満帆でした。

しかし時は移り、近年は全国的にとうふ業界の機械化が進み、中堅企業の撤退が目立つのだとか。池田食品の売り上げも伸びず、従業員の定着率も低かったそうです。

「良くも悪くも、右も左も分からない状態から家業を継ぎました。閉鎖的な業界だとだんだん理解したので、視野を広げていこうと決意しました」と瑞慶覧さん。商品管理をはじめ問題点が多く、従業員のモチベーションも低いと気付いたそうです。

「離職率も高かったので、休暇を増やすなど雇用条件を改善しました。とうふ屋勤務を安定した職業にしたかったんです。現在ではほとんどの従業員が家庭を持っていますし、ここを職場にして家族を支えてほしいです」と笑顔で語る瑞慶覧さんですが、代表就任当初はベテラン社員との衝突などもあったそう。

会社を立て直す一心で改革に取り組んだとのことで、苦労を乗り越えた今だからこそ楽しく思い出せるのでしょうね。

大豆が世界を救う!可能性から広がる新商品と新サービス

そして体制を整えるだけではなく、商品開発にも力を入れました。

「沖縄は大豆の加工品のバリエーションが少ない。島どうふ、ゆしどうふ、揚げどうふ位しかありません」ということで、数々の加工品を誕生させました。

おからサラダ・SOYラー油・畑のお肉!酢豚風!・豆富生チョコなどなど、大豆やとうふの枠を超えたメニューが人気を集めています。

重箱

また沖縄の行事に欠かせない重箱料理をお肉を使わずに大豆で作り、数々の料理を詰めて「お肉を使わない三代目池田屋のお重箱」というネーミングで販売。健康志向でSDGsも踏まえていると好評で、今後ますます注目されそうです。

「ヘルシーで高たんぱく質の大豆の可能性は果てしない。大豆は世界を救えると本気で思っています。もっと多くの人に食べてもらいたい、という気持ちでがんばります」

真剣な表情を見せた瑞慶覧さんから、伝統を守りながら時代に合わせた商品提供とニーズを追求する、熱い気持ちが伝わってきました。

「毎日SOYまーる」というサブスク(定期購入)の配達サービスも開始し、月3000円以上からなど気軽に利用できる条件で、利便性の良さや非対面購入などのメリットが口コミで広がりそうです。

豆で人生を豊かにする「豆豊(とうふ)」

訪問した機会に工場を見学させていただき、朝から活気のある様子や大豆とお惣菜の良い香りであふれる池田食品の現場を体感。

大豆はグラインダーという機械ですりつぶして地釜で煮詰め、代々伝わるナンチチカジャー(コゲの香り)をつけていました。そこにニガリや塩などを加えて固めてゆし豆腐状に。その後型に入れて固め、島どうふが出来上がっていました。

加工品工場では豆腐を練って形成し、島がんもに。出来立ての厚揚げ豆富を味見させていただくと、甘辛な味付けで食べ応えがあり満足する一品。もちもちプルプルで優しい口当たりのジーマーミー豆富は、スイーツのようでじっくり味わいたい美味しさでした。

ゆしどうふ

数々のチャレンジを重ねながら実家の伝統であるとうふを作り、大豆の可能性の追求を続ける瑞慶覧さん。大切にしていることを聞くと「豆で人生を豊かにする意味で、『豆富』という表記にこだわります」と宣言しました。

移動販売で届ける、伝統の製法と新しい感覚で作り上げた「三代目池田屋」のあちこーこの自慢の島豆富や加工食品。ぜひ味わってみてください。

※「三代目池田屋」の移動販売は本島南部~中部を中心に販売中!
詳細はこちらでご確認ください。(移動販売問い合わせ電話:098-945-0279)
https://ikedasyokuhin.com/info/car/

[基本情報]有限会社 池田食品
住所:沖縄県中頭郡西原町字池田184-3
電話:098-945-0279
https://ikedasyokuhin.com

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この記事を書いた人饒波 貴子
那覇市出身・在住。OL生活、週刊レキオ編集室勤務を経て、フリーライターに。現在は沖縄のエンターテインメントおよび店舗紹介を中心に取材・執筆。ウェブマガジン「琉球新報Style」、雑誌「porte」ほかで執筆中。 このライターの記事一覧

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