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伝統

2020.11.26

ごま風味の看板菓子こんぺんが人気! 那覇市の老舗菓子店「南島製菓」

ごま風味の看板菓子こんぺんが人気! 那覇市の老舗菓子店「南島製菓」

那覇市松尾にある「南島製菓(なんとうせいか)」は1935年に創業、2020年に85年目を迎えた老舗の菓子店。

行事用の縁起菓子や盛り菓子に手土産用の琉球銘菓、そしてもちろん手軽なおやつも取り扱い、「お菓子を買うならこの店で」と世代を超えて愛される那覇のお菓子屋さんです。

おめでたいお菓子のサンプル

お店に入ってすぐ、右側のショーケースには「祝」と書かれた大きな紅白まんじゅう、色鮮やかな鯛の形をしたコーグヮーシ(沖縄の行事に欠かせない、卵白と砂糖を固めた落雁風菓子)などのおめでたいお菓子のサンプルが並んでいます。

このケース内を見るだけで沖縄らしさを感じますが、県内で継承されているお菓子の数々を手間暇かけながら製造しているのが南島製菓です。

饅頭・月餅・焼きブッセなど

正面のショーケースには饅頭・月餅・焼きブッセなど、持ち帰り用の和菓子や洋菓子がたくさん並んでおり、特に注目したいのが「こんぺん」。沖縄の言葉では「くんぴん」ともいい、県民になじみ深い焼き菓子です。

南島製菓の看板菓子「こんぺん」の秘密

南島製菓の看板菓子「こんぺん」の秘密

「こんぺん」は南島製菓の看板菓子として創業から一番人気5550円/ギフト箱入り101200円)。年間でなんと約10万個(!)も売れているのだそうです。

琉球王国時代(1429年〜1879年)の高級菓子とされるこんぺんの歴史をさかのぼると、450年にわたって栄えた王国でおもてなしの際に振舞われ、祭祀でも用いられていたとのこと。格調高い伝統菓子だといえますね。

4代目代表の村吉政人さん

南島製菓のこんぺんは創業当時から、いりごまと沖縄県産の黒糖を使用。「40年間同じ業者さんのごまを使っています」と語るのは4代目代表の村吉政人さん。創業者のおじいさまが作り始めたこんぺんの味を、守り続けているのです。

「初代の祖父(故 村吉政能さん)から引き継いでいる味です。こんぺんは後世に残る、琉球銘菓の代表だと思っています」と村吉さん。

ご存知の方であれば「こんぺんの餡はピーナツ風味ではないの?」と思うかもしれませんが、それは近年のこと。昔ながらのごま餡にこだわるのが、南島製菓なのです。

伝統を守りながら進化を続け、愛される「こんぺん」

伝統を守りながら進化を続け、愛される「こんぺん」

ごまと黒糖が練り合わさった餡の上品な甘みのファンは多く、リピーターが来店するのはもちろん、今年は日系航空会社ファーストクラスの提供菓子に選ばれ、注目を集めました。

「旅行の度に来てくださる北海道のお客さまがいらっしゃいます。飛行機を降りて買いに来て、帰る時にまた買ってくれるんですよ」と村吉さんが教えてくれましたが、実は賞味期限が一カ月ほどある日持ちの良いお菓子なのです。お土産にもピッタリですよね。

ミニサイズ

伝統をしっかりと引き継いでいる村吉さんですが、パッケージをおしゃれにしミニサイズを作ってイメージチェンジを図るなど、新しい形での販売も始めました。こんぺんに向ける深い愛情の表れなのだと思います。

「今までのこんぺんを大切にしながら、時代に合わせた商品作りを心掛けています」と語る村吉さん。昔ながらの作り方を忠実に再現すると餡がカチカチになってしまうので、硬くならないように工夫しているのだそう。古き良きレシピと新しさのバランスを上手く組み合わせて、お菓子作りに励んでいます。

初代のこんぺんの味を守り続けている4代目の想い

村吉さんはこの老舗菓子店を引き継ぐ前は、沖縄を離れて東京在住の時期もありました。幼少のころお店を切り盛りしていたおばあさま・村吉オトさんが大好きで、孝行したい思いで沖縄に戻ってお店を継ごうと決めたそうです。

20数年前、23歳で店に入り修行を始めましたが、当時の職人さんたちの指導は厳しく、つらい毎日を過ごしていたとのこと。

「でも辞めたいとは一度も思わなかったんです」と話す村吉さんから、4代目を決意した意志の強さが伝わってきました。

店の歴史が分かる貴重な品々

そして修行を積み代表就任を控えながら沖縄調理師専門学校に入学。より専門的にお菓子を学び、店では歩く辞典のような経験豊富な先輩たちの話を聞き、店について自身で調べ上げ、南島製菓の味と歴史の探求を続けてきました。もちろん現在も続けている最中です。

店の歴史が分かる貴重な品々

店の歴史が分かる貴重な品々

お店の歴史を伺っている時、村吉さんがふと見せてくれたのは「コーグヮーシ」の木型。守礼門と首里城の型があり、「初代の祖父が九州の職人に相談しながら作った型です」と教えてくれました。かたどられたコーグァーシはカラフルに色付けされ、土産菓子として人気だったそうです。

「祖父は那覇市東町にあったお菓子屋で修行し、作り方を学びました。当時の味や製法を引き継いで創業したので、こんぺんの特徴といえる黒ごま餡の味を守っているのです」と村吉さん。

1940年代の南島製菓

戦後はアメリカの輸入菓子を販売し、さらに米軍から小麦粉を仕入れてお菓子作りを再開したそう。

ウエディングケーキなど難易度が高い洋菓子作りも手掛けたり、ちんすこう作りを機械化するなど、おじいさまである村吉政能さんは次々と新しいことに取り組んでいたそう。沖縄の行事におなじみの「レモンケーキ」を県内に持ち込んだのも南島製菓、と伝えられているそうですよ。

残念ながら村吉さんが5歳の時に、おじいさまは69歳で亡くなりました。人情深く、みんなから“親父さん” と呼ばれ慕われていたそうです。

おじいさまの元で働いていた現在82歳の新垣敏夫さん

そしておじいさまの元で働いていた現在82歳の新垣敏夫さんが、なんと村吉さんと一緒に今もお菓子作りをしています。

新垣さんが工場で作業することで、11つのお菓子に愛情を込める南島製菓の創業当時からの思いや誇りが伝わっているのだと感じました。85年にわたって多くの人々に愛されてきた、那覇の老舗お菓子屋さんならではの温かな物語です。

五玉そろばん

店舗を訪ねた時は、路面ショーウィンドウも必見! 村吉さんのおばあさまが復帰前のドル時代に弾いていた年代物の「五玉そろばん」、木製看板や写真など店の歴史が分かる数々の品が飾られています。

また店内もよく見ると、ガラスケースが無い時代にお菓子を保存していたブリキ缶やレトロなレジスターなど、貴重な品が置かれていました。どれも状態が良く、大切に保存されてきたことが分かります。

寝室にはおじいさま愛用の帽子を飾っている村吉さんは、「先代を尊敬する気持ちは永遠です。先代があったから今があるという思いを持ち続けます」としみじみ。厳しい状況に向き合いながら努力を重ね、沖縄を代表する菓子店としてのブランドを守り続けています。

つなげる伝統 ちむぐくるを込めて

南島製菓

「信じられないかもしれませんが、手作りのお菓子は職人の気持ちが味に出てしまうんです。おいしいお菓子を作りたいという気持ちが常に必要です」と村吉さん。

「形や供え方に意味合いを持つ琉球菓子を大切に伝承し、広めていきたい」と語ります。その思いと店の歴史を込めた言葉が「つなげる伝統 ちむぐくるを込めて」。菓子箱の帯やショップカードに、お店のキャッチフレーズとして書かれています。

那覇の老舗菓子店・南島製菓の自慢の「こんぺん」が、琉球菓子の代表として広がる日はそう遠くないかもしれません。那覇市内を散策する時は立ち寄ってみてくださいね。

※ちむぐくる(肝心)=真心・精神という意味

[基本情報]南島製菓(なんとうせいか)
住所:那覇市那覇市松尾2-11-28 浮島通り
電話:098-863-3717
営業時間=平日9:0019:00/日曜日10:0017:00
定休日=正月(11日〜3日)
駐車場=なし
URLhttps://www.nantou-seika.com

●執筆協力:Shotaro
●撮影・編集:饒波貴子
nohatakako
この記事を書いた人饒波 貴子
那覇市出身・在住。OL生活、週刊レキオ編集室勤務を経て、フリーライターに。現在は沖縄のエンターテインメントおよび店舗紹介を中心に取材・執筆。ウェブマガジン「琉球新報Style」、雑誌「porte」ほかで執筆中。 このライターの記事一覧

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