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2020.07.11

沖縄の食文化を学ぶ!100年越えの老舗店「西南門小カマボコ屋」の歴史を知る工場見学

沖縄の食文化を学ぶ! 100年越えの老舗店「西南門小カマボコ屋」の歴史を知る工場見学

沖縄の行事に欠かせない食品のひとつが「カマボコ」。お盆やシーミー(清明祭)など行事ごとにご先祖さまにお供えする重箱には、赤・白カマボコやカステラカマボコがスライスされて詰められています。

他県のカマボコとは違う! とちょっと見ただけで分かる沖縄のカマボコは、大ぶりで厚切りなんです。

今回は沖縄県民にとってなじみ深い、カマボコの人気店を取材しました。特別に工場見学もできましたので、レポートします。

カマボコ激戦区だった、ウミンチュの町・糸満

カマボコ激戦区だった、ウミンチュの町・糸満

漁業が盛んで、海人(ウミンチュ/漁師)の町として知られているのが、沖縄本島南部に位置する糸満市。

市内西崎町にある「道の駅 いとまん」内のお魚センターに店舗を構える「西南門小(にしへーじょうぐわー)カマボコ屋」は、大正8年創業のカマボコ屋さん。今年で101年目を迎え、地元の人々はもちろん県民の多くに愛されている老舗店です。

専務取締役を務める三代目の玉城理(たまき・おさむ)さんと、お魚センターの女性スタッフ新垣めぐみさんと玉城加代子さん

今回お話をうかがった専務取締役を務める三代目の玉城理(たまき・おさむ)さんと、お魚センターの女性スタッフ玉城加代子さん(中央)、新垣めぐみさん(右)。

元々は西南門小という屋号のみで営んでいたそうですが、玉城さんの父で二代目の章さんが「カマボコ屋」を付けた店名に決めたそう。「僕の曽祖父はウミンチュでした。捕ってきた魚を曽祖母が加工し、そこからカマボコ屋がスタートしたと聞いています」と話す玉城さん。

1979年撮影の曾祖父夫婦写真

こちらの写真は開業者の祖父ご夫婦のお写真。(1979年撮影)

市内でもこの地域は昔からカマボコ激戦区で、第二次世界大戦前から戦後にかけて約15店ほどのカマボコ屋さんがあり、県内カマボコの約7割をシェアしていたと言われているそうです。

玉城さんが小学生のころは同じクラスに他のカマボコ屋さんの子息がいたそうなので、カマボコ産業に携わっている人々は本当に多かっただろうと思えました。

現在も残っているのは西南門小カマボコ屋を含んで5店のみとのことですので、いかに激戦を勝ち抜いて来たか・・・と時代の流れを感じました。

種類豊富!地元民に愛されるカマボコ達

種類豊富!地元民に愛されるカマボコ達

「糸満が誇るカマボコ文化の歴史そのもの」といえる西南門小カマボコ屋のカマボコは、種類が豊富。

赤・白やカステラなど行事で使うものから「マリンボール」というおしゃれなネーミングのひと口サイズのカマボコ、さつま揚げのルーツとされる「チキアギ」、沖縄そばに載っているのを目にする「丸長かまぼこ」、ゆで卵をカマボコで包んだ「タマゴ巻」など。見ているだけでもおいしそうでにぎやかなラインナップです。

ばくだんおにぎり

特に私が気になったのは「ばくだんおにぎり」(1180円)! 

漁師が賄いごはんとして食べたのが始まりというこのばくだんおにぎり。うめ・さけ・みそと三種の具があり、いただいてみるとボリュームたっぷりで抜群な食べ応え。カマボコに包まれたおにぎりは何だか優しい味わいで、ウミンチュたちのお腹を満たしたごはんなのだと糸満の海に思いをはせる時間になりました。

カマボコレシピ

そして注目したいのが、公式サイトで公開中の「カマボコ・レシピ」! チキアギを使ったカマボコサンド、ばくだんおにぎりを使ったばくだんぞうすい、マリンボールのおやつタコ焼などのアイデア料理が紹介されています。

カマボコ・チップス

中でも、硬くなったカマボコをおいしく変身させた「カマボコ・チップス」は絶品! 

薄くスライスしたカマボコにオリーブオイルをなじませて15分ほど焼いた後に180度の油で揚げ、塩や青のり・カレーパウダーなどで味付け、という工程で作られ、店舗でも販売されていました。1100円と価格もお手ごろ。

魚のうま味が凝縮された濃厚な味で、「カマボコがこんなにおいしいスナック菓子になるなんて!」と感動しました。

原料に製造工程、こだわる品質

カマボコ

続いて玉城さんにカマボコ作りの裏側、まずは原料について教えていただきました。

創業当時からしばらくは糸満近海で捕れた魚を加工して使っていましたが、1965年ごろからは全国的に普及した冷凍すり身を使用。すり身はスケトウダラが主な原料ですが、ランクが低いと皮や筋などが入るので、特上のAランクの品質を使うこだわりを持っています。

沖縄では仏壇やお墓に供えご先祖さまに喜んでいただく一品ですので、真っ白でツルッとしたきれいな表面のカマボコに仕上げなければならないのです。

工場見学

お店の歴史にはじまり品揃えなどを教えていただいた後は、裏側のメイン・イベントです。何と工場見学をさせていただきました。

広々とした工場には、初めて目にする大きな機械の数々が設置されていました。カマボコ作りの工程を教えてもらいましたので説明します。

①原料を保存する冷凍庫

①原料を保存する冷凍庫

ブレンダー

②ブレンダーというこの機械は、原料(魚のすり身)を細かく砕きます。

攪拌(かくはん)機

③さらにすりつぶす攪拌(かくはん)機。

味を濃くするためにすりつぶして原料の密度を高くするのですが、この工程で味付けもします。当日の温度や湿度で原料の状態が変わるので、それを踏まえて管理・加工するそうです。

④原料の量を調整し、形を整えていく形成機。

形を作った時点で、揚げ物と蒸し物で次の工程が分かれます。

揚げ物は多段式フライヤーへ、蒸し物は蒸し器へ

⑤揚げ物は多段式フライヤーへ、蒸し物は蒸し器へと工程を進めます。

⑥最後の工程となる包装。

真空パックされた商品は全国発送も受け付けています。

玉城さんのお話を聞きながらの工場見学は貴重な機会で、シンプルなカマボコ作りの工程を知ることができました。そしてシンプルだからこそのカマボコ職人のこだわりと、デリケートさが求められる面が伝わってきました。何よりカマボコへの愛情が大切、という印象を持ちました。

カマボコ

「ウチのカマボコは柔らかく仕上がるように工夫しています。昔からのなじみのお客さまは敏感なので、少し硬くなったりするなど、何か違いがあると意見や感想を教えてくださいます」と笑顔で語る玉城さん。

100年を超える歴史あるお店を継ぐにあたり、お店に関わる歴史を調べ始めたそうですが、工場見学が終わると、曽祖父・章信さんが写った1枚の白黒写真を見せてくれました。

セリで魚を買い付けている曽祖父の章信さん

「これはセリで魚を買い付けている曽祖父です。時間の経過と共に店の歴史を知っている人が少なくなっていくので、元気にお話を聞けるうちにお店のことを教えていただきたいと思っています」と語る玉城さん。

「今はカマボコを作れば売れるという時代ではありません。歴史を調べ当時の取り組みを学んだ上で、新しい事にチャレンジしていきたいです」と続けて語りました。家族で作り上げてきたお店を引き継いでいく、思いと誓いが込められているのでしょうね。

伝統守り新たな沖縄のカマボコ文化を

カマボコ

最近の玉城さんは他県に出向き、全国のカマボコ屋が集う品評会などに参加するよう努めているそうです。各地の味や特徴を理解して研究し、新たな西南門小カマボコの可能性を追い求めている姿勢が伝わってきました。

「ふるきをたずねて新しきを知る」を地で行く玉城さん。先祖が作ってきた歴史を守り、時代に順応して前に進んでいます。その姿から、地元の人々に愛され続けるカマボコ店の人気の理由が垣間見えました。

沖縄県内では糸満市公設市場や「道の駅 いとまん」、そしてスーパーなどで購入可能です。他県からでも電話やメールで注文〜配送を受け付けていますので、伝統感じる沖縄のカマボコを味わってみてください!

商品一覧やレシピが公開されている公式サイトは、見やすくてかわいくて必見ですよ!

[基本情報]西南門小(にしへーじょうぐわー)カマボコ屋 直売店
住所:糸満市西崎町4-19 <糸満漁業共同組合お魚センター内>
電話:098-995-1512
営業時間=10:0018:00
定休日=木曜日
駐車場=あり
URLhttp://www.nishi-kamaboko.jp

nohatakako
この記事を書いた人饒波 貴子
那覇市出身・在住。OL生活、週刊レキオ編集室勤務を経て、フリーライターに。現在は沖縄のエンターテインメントおよび店舗紹介を中心に取材・執筆。ウェブマガジン「琉球新報Style」、雑誌「porte」ほかで執筆中。 このライターの記事一覧

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