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2022.07.04

沖縄市コザが舞台!映画「ミラクルシティコザ」平一紘監督とロケ地巡りの旅

沖縄市コザを映し出すエンターテイメント・ムービー「ミラクルシティコザ」。音楽があふれるにぎやかな街だった1970年のコザを舞台に、主演の桐谷健太さん演じるハルが個性豊かなキャラクターたちと繰り広げる、ドラマチックなストーリー。

当時を再現したロックンローラーの姿や流れる音楽はいま聞いても痺れるほどカッコよく、数々の魅力が詰まった映画「ミラクルシティコザ」は2022年1月、沖縄を皮切りに全国で上映され、注目を浴びました。

公開初日から半年近く経つ現在も沖縄では上映が続き、石垣島や宮古島にも拡大。リピーターが増え続け、応援団を名乗るファンもいるらしく「いままでこんな沖縄映画なかったかも!?」と思えるほどの盛り上がりです。

「ミラクルシティコザ (通称:ミラコザ)」伝説更新中!ということで、ご自身も沖縄市出身の平一紘監督に映画のロケ地を案内してもらいました。

まずは映画の舞台コザで鑑賞しよう!「シアタードーナツ・オキナワ 」

平一紘監督との待ち合わせは国道330号線沿い、沖縄市胡屋バス停前の「シアタードーナツ・オキナワ」で。

ここはドーナツをいただきながら映画を鑑賞できる、カフェのようなミニシアター。現在ミラコザ絶賛上映中で(2022年8月11日まで上映予定)、オーナーの宮島真一さんによる厳選作品を上映しています。

上映前後には宮島さんによる解説があり、作品についての情報や思い入れが深まること間違いなしの、映画がもっと好きになる場所です。

そんなシアタードーナツ は、「ミラクルシティコザ」の始まりで終わりの場所なのだそう。果たしてその理由は・・・後半の平監督インタビューにて明らかに。

館内にはなんと、桐谷健太さんのサインもありました!

ミラコザ撮影中のオフタイムに、カフェと思いフラッと入ったという桐谷さん。映画館と知ってびっくり。再び訪れ『人生フルーツ』を鑑賞し、「見て良かったです」と感動していたとか。

2階シアターのドアに、サインがありますのでチェックしてみてください。ミラコザファンの聖地のひとつですね。

[基本情報]シアタードーナツ ・オキナワ
住所:沖縄県沖縄市中央1-3-17(沖縄市胡屋バス停前)
電話:070-5401-1072
営業時間:10:30~最終上映終了時まで
​​定休日:年末年始
駐車場:なし(近くのコインパーキングをご利用ください)
公式サイト:https://theater-donut.com

伝説のバンド・紫も出演するライブハウス「7th Heaven Koza」

シアタードーナツを出て右方向へ、「ミュージックタウン音市場」に行く途中にあるのが「7th Heaven Koza(セブンスヘブンコザ)」。ジャンルを問わず多くのミュージシャンがステージに立つ、沖縄市を代表するライブハウスです。

オーナーのRayさんはロックバンド「8-BALL(エイトボール)」のボーカルで、結成50周年を超えた「紫」のリーダー・ジョージ紫さんの子息。ジョージさんの出演ライブが度々あり、紫はじめ全国区の有名ミュージシャンもライブを行う場所です。

ミラコザではロックバンド「インパクト」の拠点となるライブハウス。ハウスバンドを務めているのがインパクトで、現実と過去の融合が引き起こる重要シーンの撮影場所にもなりました。

[基本情報]7th Heaven Koza(セブンスヘブンコザ)
住所:沖縄県沖縄市中央1-2-10・3F
電話:098-982-1987
営業時間・定休日:ライブスケジュール参照
駐車場:なし(近くのコインパーキングをご利用ください)
公式サイト:http://www.7thheavenkoza.com

ゲート通りの起点、ライブシーンを撮影した「ミュージックタウン音市場」

沖縄市のランドマークで、平監督いわく「コザの真ん中」なのがゲート通りにある「ミュージックタウン音市場」。ミラコザのオープニングとエンディングのライブシーン撮影スポットです。

羽がはえた大きなギターはコザの街を象徴するようなオブジェで印象的。ホール(3階)ではライブ開催や映画上映など行われているので、要チェックです。

複合施設「コザ・ミュージックタウン」内の1~2階は飲食店やお土産店などがありますので、観光の合間にのぞいてみては。

24時間営業の駐車場は1時間100円とうれしい値段設定なので、自家用車やレンタカーで沖縄市を訪ねる時はおすすめです。

[基本情報]ミュージックタウン音市場
住所:沖縄県沖縄市中央1-1-1-3階
電話:098-932-1949
営業時間・定休日:スケジュール参照
駐車場:あり
公式サイト:https://www.otoichiba.jp

平監督お気に入り、異国情緒あふれるライブハウス「Club QUEEN」

昔ながらのステージで、フィリピンのロックバンド・PRUZM(プリズム)が毎晩演奏する「Club QUEEN(クラブ クイーン)」。本格派のロックが聞けると人気で、週末は地元の人から在米軍関係者でにぎわいます。

ミラコザでは地元沖縄で人気の粒マスタード安次嶺さん、けいたりんさんがステージパフォーマンスを披露。

ここと隣の店(ストリップバー「AMAZONES(アマゾネス)」)の間の小道から、桐谷健太さん演じるハルが飛び出すシーンもありました。

[基本情報]Club QUEEN(クラブ クイーン)
住所:沖縄県沖縄市上地1-2-1-B1
電話:098-932-8863
駐車場:なし(近くのコインパーキングをご利用ください)
公式サイト:https://www.facebook.com/Club.Queen.Okinawa

ミラコザ・ワールドをリアルに体験「スナック喫茶 プリンス」

壁一面に貼られているドル札、レトロなインテリア。ドアを開けた瞬間から目に映るのは、ミラコザで見た70年代のコザのバー。懐かしさあり新鮮さも感じる不思議な時間を過ごせます。

ここは老舗のAサインバーとして知られる、ゲート通りの名物店です。Aサインとは営業許可証のことで、本土復帰前の沖縄で米軍公認の飲食店などに与えられました。アメリカ統治下にあった沖縄の歴史が伝わってくる店でもあります。

[基本情報]スナック喫茶 プリンス
住所:沖縄県沖縄市上地1-4-2
電話:098-932-4806
駐車場:なし(近くのコインパーキングをご利用ください)

ミラコザ巡りのラストは老舗のタコス屋「Cafe OCEAN」

1967年開業、55周年を迎える「Cafe OCEAN(カフェ オーシャン)」。

映画内で人気ロックンローラーとして活躍していた70年代のハルが、稼いだお金で妻のマーミーにプレセントしたお店です。現代ではハルの息子たつるが経営し、孫の翔太がバイト中という設定で、ハル一家の思い出と現実があふれる場所です。

このお店が大好きな平監督は当て書きして台本に取り入れ、撮影場所としての交渉に成功。店名もそのまま使っています。

「ミラクルシティコザ」はなんと26回も台本を書き直ししているそうですが、10稿目くらいまでマーミーがオーシャンの常連になっているような全く違うラストシーンがあったのだとか!?

ミラコザのイメージがそのまま重なる店内で、名物店主のヤラヤッシーさんはお父様から店を継ぎ、自称シンガーソングライターとして活動する人物。

お母様から受け継いだレシピで作る看板メニューのタコスは絶品。コザを訪ねたら食べてみてください。おすすめです。

[基本情報]Cafe OCEAN(カフェ オーシャン)
住所:沖縄県沖縄市中央2-15-2
電話:098-938-5978
営業時間:12:00~24:00
定休日:なし
駐車場:なし(近くのコインパーキングをご利用ください)
公式Facebook:https://www.facebook.com/oceankoza/

「ミラクルシティコザは、あの時しか映し出せない街並みだったんです」平一紘監督インタビュー

コザのシンボル的な場所が続々登場するロケ地エピソード

―ロケ地巡り、ありがとうございました。沖縄市のシンボル的な場所ばかりで、映画の世界観が伝わります。それぞれの思い出を教えてください。

シアタードーナツは、実は「ミラクルシティコザ」の最初のスタート地点です。

この映画は 「未完成映画予告編大賞」の受賞がきっかけで制作しましたが、コザをテーマにした予告編を作って応募しようと決めた時、真っ先に相談したのがオーナーの宮島さんでした。

自主映画を撮っていた数年前からお世話になるなどお兄ちゃん的な存在で、コザについて一番詳しい身近な人が宮島さんでした。

「すごくいい」と言ってアイデアの種をたくさん与えてくださり、いろんな人を紹介してくれました。その後押しがあって予告編を撮影し、2019年に大賞をいただくことができたんです。

スターシアターズ系列劇場での4カ月の上映で盛り上がった後、最後はコザにあるシアタードーナツで上映したいと思っていました。まだ見ていない方や地元の方が行きやすい映画館です。

全国を旅した「ミラクルシティコザ」がコザに帰ってきました。スタート地点であり最終的に帰る場所がここですね。

―始まりであり最終地点とは、本当に重要な場所ですね。

セブンスヘブンも重要で一番協力してくれた場所でありチームです。シアタードーナツから徒歩すぐ、数秒で到着しますよ(笑)。

「紫」という偉大なバンドがなかったら、「ミラクルシティコザ」という作品は生まれていません。以前の僕はバンド名や曲を聞いたことがある程度で、地元に向き合った時に初めてこんなにスゴイ歴史を持つバンドであることを知りました。

リーダーのジョージ紫さんに話を聞き、息子のレイさんが経営しているセブンスヘブンでロケができることになり、映画音楽を紫のベースのクリスさんに作ってもらえることになり・・・そして紫の曲を桐谷さんが歌わせてもらえる。たくさんの奇跡が重なってできた映画だと思っています。

―チーム紫と実際に会えたことで、構想が現実になっていったのですね。

立役者になってくれたのが、録音スタッフ兼音楽プロデューサーの横澤匡広さん。大賞を取った予告編を見て、「映画化するなら関わりたい。紫にもつなげます」と言ってくださり実現しました。スタッフの話を始めたら、3日では収まらない位いっぱいあります(笑)。

―スタッフ、出演者、関係者に観客。関わる全員がミラコザを応援していると感じます。出演者は役者はもちろん芸人、モデル、パフォーマー。沖縄オールキャストと思える豪華さで楽しい。一秒も見逃せませんでした(笑)。

ここはこの人に出てほしいという思いでオファーしましたし、コメディー映画ならではのお祭りですね(笑)。クイーンで登場する粒マスタード安次嶺さんは本人から熱烈なオファーがあり、出てもらいました。いつもの格好でパフォーマンスしているので、そのままタイムスリップしたの!? と笑った人が多かったみたいですよ(笑)。

クイーンは僕が好きなライブハウスで、エグゼクティブプロデューサーが来た時に案内しました。毎日営業しているので行きやすく、地下に降りる怪しい感じとかここにしか出せない空気感があるんです。若い人からお年寄りまでごちゃ混ぜになっている客層も不思議。バンドマンの確かな腕でのライブはとても楽しいです。

コザを気に入って作品の期待感を高めてほしいという思いで、衝撃的なクイーンの次はスナック喫茶 プリンスへというゴールデンコースでお連れしました(笑)。

―プリンスはタイムスリップ感ありです!

プリンスに行くと「ミラクルシティコザ」の世界にポンと入れますよね。映画で過去シーンを描く時、セットを組んだりして多くの予算がかかるのが通常ですが、ミラコザで工夫できたのはプリンス始め、過去を表現できるお店が実在していたから。

プリンスに行って飲みながらカラオケを歌うと、映画の中に入ったような気分で面白いですよ。

―タコスをおいしそうにいただいている監督。オーシャンのことも教えてください。

ここに来て「ミラクルシティコザ」見ましたよと店主のヤッシーさんに声をかけたら、すごく複雑な顔をすると思うので、ぜひ試してみてください(笑)。

店内に入ると、現代と過去のシーンの印象が違うとビックリするかもしれませんね。現代のシーンではろくでなしのじいさんたちが飲んでいますが、実際もコザのお年寄りたちの憩いの場のような雰囲気があります。映画の中で桐谷さんが食べているのは、ここのタコス。ぜひ食べてくださいね。

撮影から上映後までミラクル続きの映画

―たくさんのミラクルを起こした映画だと思います。1月の上映からどんな奇跡を感じていますか?

見てくれる人、応援してくれる人、とてつもなくたくさんの方たちが関わってくださっています。公開前から数百枚のポスターを配ってくださる方がいたり、公開後はファンクラブもできました。作品は僕の手を離れた瞬間から観客のものだと思っていますが、ものすごいムーブメントが起きていると感じます。

過去に自主映画を制作してきましたが、全国の人が知る映画は「ミラクルシティコザ」だけなので、この作品で初めて映画監督になれました。今こうやって取材していただくことが、映画が上手くいった証拠だと受け止めています。

子どもの頃見ていたドラマ『TRICKシリーズ』の堤幸彦監督と東京のトークライブで共演できたり、何より桐谷健太さんという素晴らしい俳優が僕の中で基準になったことが奇跡だといえますね。

桐谷さんがいたから現場がまとまり、俳優として沖縄の空気に溶け込んで文化を尊重しながら役を生きるなど、スター俳優の姿勢を目で見て教わりました。最後まで一緒にセリフを考えましたし、共演した沖縄の若い役者たちにとって貴重な経験になったと思います。第一線で活躍する俳優はスゴイと思うばかりで、桐谷さんを主演に迎えられたのが一番のミラクルじゃないですかね。

―観客側のムーブメントはどんなことがあったのですか?

僕が知っている範囲の最高鑑賞回数は、20数回。入場券を写メで送ってくださる方が沖縄にも本土にもいました。それだけ見るなんてすごい、スタッフがチェックで見た回数より多いかもと思いました(笑)。ファンの人たちが集まってロケ地に行ったり、クラブハウスでファングループを立ち上げてくださる方がいたり、ダイレクトメールもたくさんいただき、うれしいことばかりです。

ライブハウスでファンイベントを開催した時は満席で配信でもたくさん見ていただいて、一番驚いたのは「ウルトラマニアッククイズ」で全部当てられたこと。絶対答えられないだろうと思った、僕も覚えていないようなことをクイズにしたんですが、回答者がいたんです!

―熱心なファンを作り出したミラコザ。どんなところが熱くさせているのでしょう!?

音楽も相まった作品全体からだと思っていますが、一番はキャラクターなんでしょうね。セリフを覚え、気に入った人物について語るファンの方がたくさんいます。演じる俳優たちがたくさんキャラ付けしてくれてキャラクター作りが上手くいき、愛されるキャラになって本当にうれしいです。

僕の次の作品を見てくれたり、出演者の舞台を見に行ったりもあり、引き続き応援してくださる方の愛情も感じています。

スターシアターズさんでの上映最終日の5月、シネマプラザハウスが満席で立ち見まで出てありがたく、舞台挨拶が終わったところで客席のみなさんが「ミラクルシティコザありがとう」と紙を掲げてくださり本当にうれしかったです。

平監督が思う、成長途中の地元コザの街

―観客側の盛り上がりがすごいですね! 見どころやこだわりを教えてください。

コザに限ったことではありませんが、街中のいろんなものは少しずつ変わっていきますよね。

ミュージックタウンの前には昔は歩道橋があったでしょうし、ロケハンの時に営業していたプリンス下のギフトストアは今はありません。でも多分歩いている人は気にしないし、住んでいる人も忘れていきます。

「ミラクルシティコザ」は、撮影した2021年のあの時しか映し出せない街並みだったんです。桐谷さんの年齢、主人公の翔太に近い年代の僕が監督で、紫メンバーが現役で活躍中で。数年後に何十億円払っても同じ映画は撮れませんし、あの街並みで撮れたのは天文学的数字の確率の中での瞬間的なことだったと思っています。

普遍的で人生を映しだすのが映画だと思っているので、あの時撮って良かったと心から思っています。シアタードーナツで鑑賞して、この記事を読んでコザの街を歩いてほしいです。

―劇場映画デビュー作として「ミラクルシティコザ」という大作を発表した、平一紘監督。これからも沖縄関連のテーマをベースにした映画製作に取り組み、世界へと発信していくでしょう。

最後にコザの魅力を聞きました。

コザは成長途中の街だと思っています。新しい企業や店舗がたくさんあるんですが、なぜあるかという理由は明確にならない。でもその空気感は、代々受け継がれてきたコザで生きる人たちの活気が作り出していると僕は思っています。

例えばコザの全住民がそのまま他県に移動したら、コザのような街が出来ると思うんですよ。場所はどこでもよくて結局は人間。コザの人の主義は米軍基地の近くにある環境から作られ、お金が集まったから人も集まりました。国籍問わずいろんな人が来ていろんなものが生まれていく中、誰でもウェルカムと歓迎する街だったんですよね。

沖縄の人は僕を含め排他的になってしまう面を出す場合があると思いますが、コザは『あいつは変わり者だけど別にいいんじゃないか』みたいに許容する地域。

なので、何ひとつ気負わずに遊びに来ていい街だと思っています。歩いて街並みを見て空気感を味わうのもいいですが、勇気を出して街の人と話してほしいです。

プリンスに行ったらママに話しかけてもいいですし、オーシャンだったらヤラヤッシーさんと話したり、近くにいる人に声をかけてもいいですし。SNSで僕に絡むのももちろんOKです。コザの一番の魅力は人。味わい尽くすには人を知ってほしいです。

映画「ミラクルシティコザ 」予告編

[基本情報]ミラクルシティコザ 
2021年製作/日本
監督・脚本:平一紘
出演:桐谷健太・大城優紀・津波竜斗・小池美津弘・津波信一・神崎英敏・アカバナー青年会・渡久地雅斗・山内和将・玉代勢圭司・山城智二 他
公式サイト https://miraclecitykoza.com
公式ツイッター https://twitter.com/miraclecitykoza

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この記事を書いた人饒波 貴子
那覇市出身・在住。OL生活、週刊レキオ編集室勤務を経て、フリーライターに。現在は沖縄のエンターテインメントおよび店舗紹介を中心に取材・執筆。ウェブマガジン「琉球新報Style」、雑誌「porte」ほかで執筆中。 このライターの記事一覧

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