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食事

2019.12.30

大自然と共に生きるやんばるのオフグリッドカフェ「Okinawa Rail」

こんにちは!沖縄出身・在住のライター小鍋悠です。

平成28年9月15日に沖縄本島の北部エリア・通称「山原(やんばる)」が、33番目の国立公園「やんばる国立公園」として産声をあげたのは、まだまだ記憶に新しいところ。

私も大自然の息吹あふれる北部エリアが大好きで、長い休みの度にやんばるへ車を走らせ、県外から沖縄観光に来る友人がいたら、必ずといって良いほど、やんばるを案内してきました。最近では沖縄最北端の国頭村のイベントや音楽ライブを、地元の人たちと楽しんでいます。

今回は、そんな「やんばる国立公園」でのおすすめスポットの1つ、「BookCafe Okinawa Rail」をご紹介します。

電線もない山奥で、太陽のエネルギーを使って自給自足。床から天井までの大きな本棚に敷き詰められたいっぱいの本とコーヒー。いやぁ、早く行きたくてしょうがありません!

いざ!沖縄県民でもびっくりなローカル山道へ

沖縄自動車道「許田インター」を降り、北向けに国道58号線を一直線。国頭村の辺士名トンネル手前から「国頭村森林公園」向けへ右折し、国頭村森林公園や「与那覇岳登山口」の前を通過。写真のような山道を通ると店に到着します。国道58号線からの所要時間は約30分というところでしょうか。

ここは、「沖縄にこんな山道があったんだ!」と沖縄県民でもびっくりするほど、登山家や自然ファンに愛されるニッチなローカル山道「大国林道」。

店へたどり着く間も、さまざまな自然美が山の訪問客を誘惑してきます。

店の外観はこんな感じ。私は最初見たとき、本島北部の何かの研究施設かな?と思ったほど、シンプルでスタイリッシュな建物。

自然に溶け込んだ造りなので、すーっと通り過ぎてしまわないよう要注意です。

テーブルとイスと本で自分のくつろぎの空間をつくる

青い看板の右手から、店に入っていきます。駐車場から店入り口まで、のびのびとした野生の木々が出迎えてくれます。

店内はこんな感じ。「わぁお!」と、大きな窓から見える美しい景色に感嘆し、息を飲んでしまいます。

オーナーの金城壮郎さん。

「この空間、なかなかいいでしょう?僕はもともと、親がやっている『やんばるくいな荘』という民宿で働いていまして、『疲れている時にテーブル・イス・本があるくつろぎの空間があったらいいなぁ』と思って、このカフェを作ったんです」

構想から6年。2016年にカフェをオープンさせ、あれよあれよという間に、週末は1日40名もの客で賑わう人気カフェに成長しました。

「ランチプレートで使う食材、1杯のコーヒーでさえも、ゆっくり丁寧に淹れて扱いたいから、長く待ち時間を取らせてもらっているのに、沖縄本島中南部や本土の方からも、わざわざお客さんが来てくれる。割と、カフェ好きやオフグリッドが好きな人、特に女性が多く来てくれているように感じます」

同じ沖縄本島でも、那覇からこちらに辿り着くのに来るのに約100km。いかにファンに愛されているのかが垣間見えます。

電線なし、上下水道なし。ゼロからはじまった自由自在の3000坪

電線1本も立っていない山奥。上下水道もないはずの大自然エリアで、どうやってカフェをつくったのか不思議でたまりません。

「この3,000坪の広大な土地は、20年前に父親が買ったものです。『3,000坪』と聞くと都会では凄いかもしれないけど、山の面積では最小クラス。父親は、昔ここで民宿をやろうとしたけど、水と電気の問題で実現できなかった。今は『自給自足』という生活に人気が出てきていますが、親の時代は『?』と思われるような時代だった。だから余計に業者にも断られたみたいで」

電気や上下水などの専門家であればあるほど、今でもこのエリアで店をつくれたこと、また経営できていることを不思議がるといいます。だからこそ金城さんは、電気を扱う免許を取得し、自ら電気と上下水道を整えました。

店の周辺は工事車両が通れないような狭い山道。金城さんは自らちょっとずつ植物を刈ったり整備したりしたことで、今では大きい車両が通れるようになりました。

設計士も大工も頭を悩ませたOkinawa Railのこだわり

ここからは、Okinawa Railのこだわりを紹介。もともと本や図書館が好きな金城さんは、迷わず店内に大きな本棚を設置しました。

店オリジナルの本棚は、コンクリートの間にエアー(隙間)を入れたり、本棚に鉄筋を入れて天井から本棚を吊ったりと、設計士と共に様々な工夫を施したもの。

客用のテーブルも、大工さんが頭をひねりながら国頭村のセンダンの木を使用し、3枚の板をくっつけて作ってくれました。難易度の高い技術を要したそうです。

椅子は、客の座り心地を優先して図書館用の椅子を購入。背もたれの部分がカーブしているため、客が読書で長時間座っても心地良いデザイン。

気になった人は、店に来たときそれぞれのデザインや手触りをぜひチェックしてみてくださいね。

このピアノは、もともと金城さんの実家にあったものを移動。

お姉さんが小さいときに弾いていたピアノだそうですが、今は誰も弾いていないので、こちらに移動してきたとか。「店に移動したら、姉がまた弾きはじめた」と笑顔で喜びます。

薪ストーブ。毎年12月中旬頃から始めるそうですが、この時期になると薪ストーブのファンが多く店に訪れるそうです。

薪は、周りから貰った不要な材木を自ら薪割りをし、使用しています。林業が盛んな国頭村ならでは。

「都会から来た人は、山で動き回る。忙しい人ほど、くつろぐことを知らない。山歩きするための山ではなく、くつろぐ山があってもいい。僕は、草もあまり刈らないようにしているのですが、それは植物の『生える』動きを楽しんでいるから」

森だけがある。

これが、金城さんの一番目指すところ。コーヒーをゆっくり待つ時間を楽しむ。何もない空間を楽しむ。時には、時間を忘れることがあってもいい。

「ありのままの飾らない空間の美しさと楽しさを、ぜひ多くの人に知って欲しい」と、金城さんは言います。

「森の痛みは僕の痛み。」森と共生するオフグリッドなライフスタイル

今度は、店のメインである「オフグリッド」なライフスタイルをご紹介。

オフグリッドとは、「電力会社の送電系統(グリッド)と繋がっていない(オフ)」という意味ですが、Okinawa Railでは、太陽光のエネルギーを電気に変え、店の照明や扇風機、調理機械などを動かしています。

このソーラーパネルがあるおかげで、2~3日雨が降り続いても大丈夫。意外にも、雨がたくさん降る梅雨時期は太陽のパワーが強いので平気だそうです。2月のほうが太陽のパワーが少なくて心配だとか。

父親自慢の畑ではこんなものが植えられていました。

カタバミ。つまんだら、種がドバっと飛び出してきます。

ネギ。強くて美味しそう。

島野菜カンダバー。茹でてもサラダにしても美味しい。

ミズナス。レアな野菜です。

私も一度ランチプレートを頂いたことがありますが、葉野菜がとても生き生きしていて美味しかったのは、金城さんやお父さんが真心こめて栽培していたからなんだと、畑を見て腑に落ちました。

オフグリッドのメイン装置「蓄電池」。えっ?・・奥にヤモリ!!

「そうなんです。うちのカフェは、天敵の虫とどう折り合いを付けるかが、難しい。ヤモリどころじゃなく、ヘビも国指定天然記念物のケナガネズミもいますから(笑)。ヘビは、台風の後によく窓のサッシにいるので、しっぽをつかんで、体を引きちぎらないように逃がしています。ハブは、臆病なので出てきません、安心してください(笑)」

横を見ると、今度はクモ。「虫は虫で、食べ物を捕るために頑張っていますから、放っておいてください。どうぞそのままに」

簡単に話していますが、普通はヘビや大きなクモを見たら、ヒャーっと逃げるのが人間。森で生きる人間の「生きる強さ」を感じます。

これは合併浄化槽。店から出る全ての生活排水を浄化する施設。各家庭に義務付けられているものだとか。

蒸発装置。滅多にお目にかかれないレア施設。さきほどの合併浄化槽でキレイにした水を、毛細管現象などの自然の働きを使って気化蒸発させる下水処理装置です。

「こんなに自然囲まれているエリアですから、僕はカフェの排水を川や海に流してまで稼ぎたくなくて。心情的に心が痛くなります」

森の痛みは僕の痛み。

金城さんがそう言っているような気がしてたまりません。

リアルタイムな晴耕雨読を体験。オフグリッドの醍醐味は「メリハリのある生活」

「電気を自分でつくるオフグリッドって、『不便じゃないですか?』って時々言われることがありますが、僕からすると、普通以上の生活ができる。太陽がある時はいっぱい動き、曇りの時はゆるやかに動く。まさに『晴耕雨読』。メリハリのある生活ができます」

電気が生きている感覚で電気に水をあげる。

まさに太陽に感謝、自然の恵みに感謝。

最近、日曜日の来客が多く、1日40人来るときもあるという「Okinawa Rail」。

満席のときは、リピーターが新規客に譲る姿も見られるそうですが、ゆっくりしたい人におススメな来店時間は平日12:00~15:00だそうです。

今後、森の植物を使った料理教室や音楽イベント、個人出版「ZINE」なども展開していきたいと目を輝かせる金城さん。

ピアノ発表会やセミナー、イベントなどの会場貸しも大募集中です。

皆さんも、やんばる国立公園のドライブがてら、太陽の光や風の音、鳥のさえずりがこだまする「Okinawa Rail」に訪れてみてはいかがでしょうか?

森の命の鼓動を聞きながら、心身のトリートメントTimeを満喫してくださいね。

[基本情報]BookCafe Okinawa Rail
住所:沖縄県国頭郡国頭村奥間 大保謝原2040番107
電話:080-8350-5524
営業時間:10:00~18:30(L.O.17:00)
定休日:月曜日、火曜日(臨時休はHPでお知らせ)
HP:https://www.okinawarail.com/

konabeharuka
この記事を書いた人小鍋 悠
沖縄出身、沖縄在住。ことば×音楽のライフワーカー。某テレビ会社とラジオ局勤務を経て、現在ライター&司会者。小さい頃はとにかく図書館が大好きで、大学ではびっしり沖縄民話の調査に当たり「取材」の原点を味わったことから、ライターへ。得意な執筆分野は「沖縄あるある」。趣味はJazzとピアノ。 このライターの記事一覧

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