体験
2019.12.10
喜界島に行ったらぜひとも見学したい!島の恵みをふんだんに生かす黒糖焼酎の蔵元「朝日酒造」
奄美黒糖焼酎語り部第88号の勝です。奄美黒糖焼酎語り部というのは、黒糖焼酎の魅力を伝えていく役割を担うために奄美酒造組合によって認定されるものです。
語り部として酒蔵めぐりをし、その魅力をお伝えしていきたいと思います。第一弾は喜界島にある朝日酒造です。
目 次
喜界島で100年続く老舗の酒造り
喜界島は奄美大島の北東に位置する島。奄美空港から東にその姿が見え、飛行時間なんと5分で行けてしまうお隣の島です。
喜界島の「朝日酒造」は、黒糖焼酎蔵元の中でも最も古い蔵元の一つで、1916年に初代の喜禎康二(きてい やすに)さんが創業しました。現在は杜氏でもある四代目の喜禎浩之(きてい ひろゆき)さんが代表を務めています。
朝日酒造が黒糖焼酎造りでメインとして使っているのは、他の酒蔵と同じように沖縄県産の黒糖。ですが、「陽出る國の銘酒」(ひいずるしまのせえ)という銘柄だけは、喜界島でサトウキビを自社栽培して焼酎を作っています。
つまり、サトウキビを有機栽培するところから焼酎造りまでの工程を一貫して行っている珍しい蔵なのです。
まずは黒糖焼酎づくりのスタートポイント、製糖工場へ案内していただきました。
今回訪問したのは11月初旬だったので、サトウキビの収穫はまだ。糖度の上がる12月から行われると言う、サトウキビの搾汁と製糖の様子を動画や写真で教えていただきました。
サトウキビは有機JASの認証を取った自社農園で丁寧に栽培しています。「有機栽培は簡単ではないですが、有機栽培のほうが美味しくて収量も多いキビが作れるのです。」と喜禎さん。
原料の黒糖や米麹を試食。五感で感じる見学コースにわくわく!
次は車で移動して酒蔵見学に。
まずは、原料となる黒糖とお米、そして水のお話を聞きながら、沖縄産の黒糖と喜界島の自社農園の黒糖を試食。どちらも焼酎造りの原料ですが、味が全然違ってびっくりしました。原料がこれだけ違えば出来上がりの焼酎の味もどれだけ違うのだろう、とワクワクします。
喜界島の水も朝日酒造の特徴の一つ。喜界島はサンゴ礁が隆起した島なので、ミネラル分豊富な硬水です。この硬水がしっかりとしたボディのある深い味わいをもたらします。
焼酎造りでは、まず最初にお米を洗い、蒸したところに麹を混ぜ米麹を作ります。この時は、朝日酒造の代表銘柄である「朝日」を造っていたので、タイ米に白麹という組み合わせでした。銘柄によって、使うお米や麹が異なります。
できた米麹を試食させていただきました。お米の周りに白い粉状のものが付いています。
わたしは米麹は見たことはあったのですが、試食したのは初めて!
酸味のある、少しヨーグルトのような香りのするお米でした。この酸味が焼酎造りには大切なのだそうです。
いよいよ仕込みの現場へ。階段を上ってタンクを上から覗きます。
仕込みの時期によって見ることのできる工程が異なるのですが、この日は、ちょうど一次仕込みと二次仕込みの両方を見ることができました。
1つ目のタンクは一次仕込み。水と酵母とさきほどの米麹が入っています。仕込んで二日目というタンクの中ではポコポコ泡が出て、タンクの上部は温かくなっていました。麹菌が造った酵素が澱粉を食べて糖に変え、その糖を酵母が食べてアルコールに変えるというプロセスです。
化学ではなく、自然の生き物たちが焼酎を作っているのを直に感じます。
2つ目のタンクが二次仕込み。一次仕込みが終わったところに黒糖を溶かして加えます。酵母の好物の糖が補給され、さらにアルコールを造り出します。タンクの中では元気いっぱいの酵母たちがブクブク言っていました。
「菌が生きている!」と感じる瞬間。黒糖を加えるだけでこんなに変わることに驚きます。
「人間の役割は、酵母たちが快適に活動ができる環境を作ってあげること。温度管理などのお手伝い役で、主役は自然です。」という、喜禎さんの言葉も納得です。
発酵を終えたら蒸留して蔵で熟成へ
二次仕込みが終わると、いよいよ蒸留。熱を加えてアルコールを取り出します。スティルという装置で湯気になって蒸発したものを冷やす工程で、最初に出てきたものは度数が高く、だんだん低くなり、混ぜることでアルコール度数44度くらいになるのだそうです。
蒸留が終わったお酒は、タンクに移され出荷までの時間、じっくりと熟成させていきます。
朝日酒造では、2004年に貯蔵用の蔵を作ったそうで、そこも見学させていただきました。
タンクと床面は、美しい喜界島の海をイメージして、ブルーで統一しています。美しい海に潜っているようです。
タンクの上部は木の床が広がる空間になっているので、ギャラリーになったり、音楽演奏会が開催されたりと、地域の人たちとの交流の場にもなっているそうです。
レア度満点!酒蔵見学でしか購入できない汲み出し焼酎
再び酒蔵に戻ってきて最後のお楽しみ、試飲タイム。製造工程を知ったうえで、そして酒造りに携わっている方の想いを直に聞いたうえで飲むお酒は、また格別です。
通常はタンクで寝かせた焼酎を濾過して瓶詰めするのですが、ここでは特別に濾過前のお酒をひしゃくで汲み上げて試飲させてもらえます。
今回は、自家栽培のサトウキビで作った黒糖を使い、米は有機の国産米を使った「陽出る國の銘酒2019」と、通常の2倍の量の沖縄産黒糖とタイ産米を使った「壱乃醸 朝日」をいただきました。
この酎みだしのお酒は、試飲して気に入ったら、それを瓶に詰めてもらえてお土産として購入できます。試飲も購入も朝日酒造の工場見学者限定!奄美黒糖焼酎語り部としても大変おすすめの超レア体験です。
ラベルには、蒸留年月日、タンク番号、その時のアルコール度数、そして詰口年月日が記入されています。すぐに飲んで、荒々しい状態を味わってもいいですし、自宅で寝かせて瓶熟成を楽しんでもいいですね。
喜禎さんによると、時々瓶を振ってやると熟成がまろやかになりますよ、とのことでした。
また、一般に市販されている銘柄もこちらで同時に購入することができます。
酒蔵見学は約1時間半。必ず予約を
見学は予約制。見学者の都合にあわせて見学コースを考えてもらえるのが嬉しいポイント!まず、見たいものやどのぐらい時間があるかなど、予約時に希望を伝えましょう。
わたしは「飛行機まで3時間ほどあるので、できるだけいろいろ見たい」とお願いしたところ、製糖工場から酒蔵までじっくりと見学させていただきました。
通常の酒蔵見学コースは、約1時間半。サトウキビ畑から製糖工場までを含めると約2時間半のフルコースです。
時期に応じて見学できる工程が変わってきますが、それもまたその時々の楽しみですね。
[基本情報]朝日酒造株式会社
住所: 鹿児島県大島郡喜界町湾41-1
TEL: 0997-65-1531
駐車場 有(10台)
酒蔵見学は、要予約、無料
http://www.kokuto-asahi.co.jp/
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